ディレクターに求められるコミュニケーション上の「在り方」とは何か?:思考するWebディレクション番外編

みなさんこんにちは。最近はSchooや各地でのセミナー講演とかでブイブイ言わせております、デスクトップワークス田口です。

今回、Webディレクターズマニュアルがついに書籍化!ってことで、(実は初めて)こちらでも記事を書かせていただこうかと。で、今回は書籍の中でも取り上げた「ディレクターに求められるコミュニケーション」の話。

最初に言っちゃいますが、特出したスキルもこれといった腕もなかった私がWebディレクターとして独立して16年以上。この仕事でここまでやってこれたのはこの「コミュニケーションへの追求」があったからだと思っています。

それくらい大事な部分なんですよ。いや本当に。

ディレの仕事はコミュニケーションへの期待でできている

  • 依頼者であるクライアントの要望をヒアリングして、要件定義を行い、アイデアを練りながら企画を組み立てて立案
  • 内容を設計をしてデザイナーやプログラマー、カメラマンやライターなど各種専門分野のクリエイターをハンドリング
  • 最終的な成果物を作り出してビジネスを上手いことやるお手伝いをする

僕らディレクターにとっての仕事って、ざっくり言い切ってしまえば上記のような感じですよね。

で、上記で既に出ているんですが、この仕事って大部分が「人とのやり取り」...つまりコミュニケーションで占められているんです。

ヒアリング・立案時のプレゼンしかり。要件をまとめる会議やクリエイターへの依頼しかり。

ほとんどの部分がコミュニケーションの設計で構成されているディレクターの仕事において、僕ら自身に期待されるのはまさに「コミュニケーションの品質」ということになるんですよ。

商品価値を高める「提案視点」コミュニケーション

これって逆に言えば、つまり "どれだけ優れた制作知識や技術を持っていてもコミュニケーションが上手く作れなければディレクターとしては価値を提供できない" ということにもなる。

であれば、私達が考えるべきは『どうやったら格好いいモノを作れるか』よりも『どう動けば望んだコミュニケーションの形を作り出せるか?』という一点に絞られてくるんじゃないか?と、思うんです。

で、私がその疑問に対し返せる答えは一つ。ズバリ「提案視点の有無」ってやつです。

イケてるディレクターに共通する「提案視点」の思考

色んな仕事で成果を出して、クライアントからの信頼も厚く「この人仕事できるなー」って周りに思わせちゃうタイプのディレクターさんって、大抵個性が強いのであんまり共通項目は多くなかったりします。

が、一つ確実に全員共通している特徴が前述の「提案視点」での思考力。

彼らはとにかく自ら率先して考えて動いて、あれこれ言われる前にガンガン自分から提案をしまくるタイプばっかりなんですよね。

残念なディレクターに多い「受け身姿勢」の思考

で、上記とは逆に「いまいち上手くやれてない」残念なディレクターさんに共通しちゃってるのが「受け身姿勢」の思考パターン。

とにかく何か事を動かす前に「何しましょう?」と相手の指示を仰ぎ、それを聞いたら相手の言うがままに動こうとしちゃう感じです。

本人は依頼者の意図を極力叶えようと頑張っているつもりが、大抵プロジェクトのボトルネックになって成果に結びつかなかったり。最悪プロジェクトそのものの足かせになってしまったり...。

わざわざ書くまでもなく「当たり前」の話ですよね。

だってそもそもクライアントはWebのプロじゃない。制作においてプロ側にいるのはディレクターの方なんですもの。

誤解を恐れず私なりの解釈で言い切ってしまえば、Webディレクションとは『プロが素人をもてなすサービス』なんです。

なので、この "もてなし" の部分に提案視点で向き合うこと。これがディレクションにおける「差がつくポイント」なんだと思うんです。

できるディレクターは、おせっかいでボーダレス

提案視点とは言いかえれば、おせっかい視点。その名の通り、しなくていいかもしれないことをしちゃうための視点。

例えば「サイトリニューアルしたい!」というオーダーに対して「どこをどう変えますか?」とか聞いちゃうのは、提案視点からみればとてもとても残念な姿勢ということになります。

どこをどう変えるべきか、具体的に指示できるクライアントはもはやプロのディレクターを兼ねた存在であり、世の中全てのクライアントがそれを出来るわけじゃありません。

相手から言われたことを言われたサイズで受け取り、それを要件の全てとして認識してしまうような姿勢では、ディレクターとしての商品価値どころか、存在価値すら危うくなってしまいます。

「それは制作じゃない!マーケティングの範疇だ!」とか「それはコンサルの役目!」なんて都合よくWebディレクションの在り方に一線を引いてしまうようでは、「あなたに頼んでよかった!また相談したい!」といった満足を相手から引き出すことはできないんです。

タクシーのルート案内にみる「立場から思考」するコミュニケーション

上記で解説してきたようなコミュニケーションに対する考え方の違い、そしてそれによって「受け手の印象がどう変わるのか?」という点については見知らぬ土地でタクシーに乗った時の事を思い浮かべて貰えばピンとくるはず。

例えば目的地を伝えると「そこに向かうなら、今の時間だとあの道からあの道に入って、こう行きましょうか?」と提案してくれるタイプ。そして一方で、目的地を伝えた瞬間「どのルートで行けばいいですか?」と質問で返してくるタイプの運転手さんがいますよね。

この場合、そもそもの関係性として、タクシーの車内においてプロである運転手さんに素人である客(この場合自分自身)が頼っている状態のはず。

にも関わらず「どのルートで行けばいいですか?」と聞き返した所で、お客がそのやり取りに満足するとは考えにくいんですよね。お客側が運転手以上に道に詳しいケースは少ないわけですから。

逆に、前者のようなベストな提案をしてくれることは、「このタクシーに乗ってよかった!」という満足を生み出しやすい。というわけです。

「いきなり提案から入れ」なんて言われるとちょっと怖気づいてしまうような人も、ちょっと上記を思い出して一度『客の立場で考えてみる』ってのをやってみると良いかもしれません。

すると「プロとしてどう在るべきか」が明確に見えてくる。さらに不思議なもので「わがままな客」になればなるほど、どうやってもてなすべきか、どう対応すべきかが、ハッキリ見えてくるんです。

わがままな客になることで、逆に理想的なサービスを考えること。これはコミュニケーションにおける「おもてなし」を追求する上で最もシンプルかつ有効な方法だと私は思うのです。

人は「当たり前の100点」に満足なんてしない

プロが素人をもてなすディレクションにおいて、クライアントから期待をかけられたディレクターが受け身姿勢ではどうにもなりません。自ら率先して考え、動き、先回りして仕掛けていかなきゃダメなんです。

だから常に前のめりに仕掛けまくること、これが相手の満足を引き出すことにつながります。

逆に、下請け的な受け身姿勢では、どんなに努力しても所詮、100点しかとれない。最大限努力しても100点が限界。

人は、当たり前の100点には満足しない。当たり前の100点なんかを狙っているうちは、絶対に相手の満足なんか引き出し続けることは出来ません。

さらに、引き出した満足は、その先の信頼関係にも繋がっています。信頼関係が強まれば、より相手に歩み寄ったディレクションができる。結果、クライアントにとってベストな成果物を提供することもできるわけです。

一歩前に出るアプローチを心がけることで、満足は信頼を積み上げてく。積み上げた信頼はクライアントを含めたチーム全体の士気を高めるし、パフォーマンスを大きく高めてもくれます。

この記事を読んで、皆さんが今まさに感じたこと「これ、やるべきかも?!」って思い立ったこと。それが皆さんそれぞれの現場を彩るヒントになれば嬉しいです。

というわけでイベント告知

上記本文中で触れていた内容について、日本ディレクション協会LIGさんとの共同で進めているリアルスクールでセミナーやることになりました。

もう殆ど時間が無いんですが、もし気になりましたらぜひぜひ。