ディレクターかくあるべし?スキルを可視化する『ディレクション検定』の中身について中の人に聞いてきた

お久しぶりです。ナカムラです。

Facebookなどでちょいちょい話題になっていたので、もしかすると知ってる人はもう知っているかもしれませんが、今回はデスクトップワークス田口さんが立ち上げた『ディレクション検定』について。

というのも実は、僕自身 日本ディレクション協会立ち上げ当初から割と強く以下のようなことをそこそこ大きな声で叫んでまして。(やや反発的な意味で)ちょっと気になってはいたんですね。

元々中村が主張していたコト

  • ディレクションスキルは変わりゆくもの
  • だから都度可視化や定義はできるけど資格化は無理
  • というわけでディレ協は資格事業に手を出さない

...要は、ディレクションを資格化するのは無理だし無駄でしょ派だったんですね。

いや頭から否定するってほどの話じゃないんですが、正直「なんで?」という思いも強かったので、思い切って本人に話を(※中村同様 ディレ協の助田さんと二人で)伺ってきました。で、せっかくなので超久しぶりなディレクターズマニュアル更新としてみました。

なぜ今『ディレクション検定』なのか

――田口

制度自体は分かりやすく『ディレクション検定』なんて名乗ってますが、要するにWebディレクターの能力を可視化するスキル測定サービスです。

なので知識量のテスト...といった形ではなく、『現場でどう考えどう行動するか』をプランニングスキル、マネジメントスキル、コミュニケーションスキルの3つの観点、9つの能力値の指標から測定するという形で設計しています。

ディレクション検定の採用するスキルマップ評価軸

基本的には上記9つの軸(発想力、構成力、表現力、折衝力、提案力、洞察力、段取力、調整力、推進力)において『自己分析』と『試験結果』、および『所属コミュニティにおける平均や要求』などを重ね合わせることでディレクターのスキルを相対的に可視化することを目的としているそう。


なるほど。

しかし...スキルの可視化という観点で見ると、自己評価やコミュニティの基準との差分取得というアプローチといった目新しさはあるものの、まぁ手間はかかりそうですし、なんというかよくあるスキル可視化サービスと大きくは変わらないような...?

元々僕自身がディレクションの資格制度化などにやや否定的...という点を横に置いたとしても事業的に渋そうなモノのように思えてしまうんですが。そのへんどうなんでしょう?

――田口

うーん、営利目的の観点でいえば確かに難しいでしょうね。このプロジェクト自体、20年間に渡り「ディレクションを追求」してきた個人的な思いに依る部分が大きくて、ある意味では 「ディレクターの価値」の根本的な底上げに挑もうとしているて事なんだと割り切ってます。

確かに似たようなサービスは存在するといえばするんですが、ディレクションに対してはやはり適用しにくく、人事や人材育成の現場の体感としては足りてないように思えるんです。

20年間抱えた『評価・マネジメントする指標がないのに回っている』というディレクション現場の課題

曰く、田口さんはオンライン・オフライン問わず年間数百件にも及ぶディレクションセミナーや企業研修の登壇を通じ、以下のようなことをずーーーーっと思い続けてきたそう。

  • 研修を受ける側の個々人はそれぞれに特性を持っていて『○○さんは■■が向いてる』『○○さんは▼▼は向いてない』など偏りが存在している
  • しかし実際の評価は?となると結局『プロジェクト実績の規模や売り上げ』という結果のみに依存してしまっている現実がある
  • 例えば『無茶苦茶な条件からなんとかした』ということと『超でっかいプロジェクトをすごい人たちと一緒に美しくやってのけた』というのは結構違うはずなのに同軸上で評価されてしまう

――田口

売上や規模で評価するっていうのは、上(経営層など)から見れば 一見上手く回っているように見えるんです。が、実はこれ『次にアサインするプロジェクト』を選定するタイミングで、各人の特性をマネージャーが完璧に理解して冷静に割り振れないと現場は上手く動かなくなってしまうという危険性を含んでるんですね。

ことディレクターとなると成果物自体の定義が難しいし、これを一人ひとり把握しようとするならそれこそ人事権を持つマネージャーは超人にならなければいけなくなってしまう。

現場が上手く動かなくなれば結果として人は疲弊しますし、離職だって加速してしまう。コストリスクが巨大化しすぎてしまうと思うんですよ。

確かに『すごい実績』とやらをひっさげて現場に入れてみたら『何だこいつ!』てな事は稀に...たまに... いや結構頻繁にありますね。ええ。

そうかと言って全マネージャーが田口さんレベルで個々人と触れ合って得手不得手&思考傾向を把握できるわけでもなし。確かに要不要でいえば必要なのかもですね。ディレクションスキルの可視化は。

――田口

そうなんです。とにかく可視化にしても評価軸にしても、ディレクションに関しては実は "実際には機能していない基準" しか無かったんですよ。

僕自身も最近まであまり明確には認識...というか言語化できていなくて、気づいたときは本当にビックリしました。

うーむ。これは確かに。

もちろん最終的には数字で評価ってこと自体間違いじゃないんでしょうが、それ単体で全部なんとかなるか?となるとそういうわけにもいかない。なのに全体として "それでいいじゃん" になってしまっていた...と。

確かにプロジェクトによって数字を出すために必要なスキルって全然違いますもんね。やたら領域広くなりがちだし...。

企業側の危険な人材要求と、マッチングで可能性を広げるスキルマップという考え方

――助田

実際、僕自身がディレ協の役員やりながらディレクター専門の人材紹介業なんてのをやってますが、『企業から出されるディレクターの求人票』ってホント現実離れしたものも多いですよ?

そう話を継いでくれたのはディレ協の助田さん(上記写真右側)。

ディレクションに関する評価軸が整っていない状態で『数字をあげるために必要なもの』を個人に求めようとした結果、実際の現場で起こっている事態について語ってくれました。

――助田

結局都合のいい役割を全部ディレクターに求めようとしちゃうんですよ。それこそ工数管理にメンバーマネジメントに、品質管理、これに必要になる基本的なテクニカルナレッジ、さらに当然のようにアクセス解析からのグロース設計能力に、SEOにも精通してて、コンテンツも見れて、何ならイベントの進行・運営もできて......みたいなのが普通に出てきます。

で、その膨大で広大な要求を下げず、ようやく会えた人材に『うーん、6割くらいは欲しい人材像にマッチしてるんですけどねー...今回はナシで』と言い切っちゃう。

これ、多分その採用が上手くいかなかったことで中の人員はさらに大変なことになるでしょうし、誰も何も得してない気がするんですよね。

なんと。いわゆる表に出てくる求人票では無い所でそんな無茶苦茶がまかり通ってたんですね。

というか、それこそまさに『全部を1人に要求してしまう』という評価軸機能不全が起こした弊害...なんですかね。なるほど。これは田口さんが『足りない』と言うわけだ。

――助田

田口さんの『ディレクション検定』におけるスキルマップに置き換えると、多くの企業が丸い形のスキルマップばかりを望んでいるということになるのかな。

確かにそりゃそうだとも思うんですが、実際には既に存在しているチームに編入するわけだし、個々人には凹凸があって当たり前。組織全体として『AさんBさんCさんにDさん追加することで組織として求めている理想の形になっていく』みたいにマネジメントできないと。なんですよね本来。

あーーーー。ごもっとも。

真ん丸いスキルのマップは理想だけど、そんなものは(ほぼ)存在しない。しかも組織として求める形がそうかもよくわからない。

なら、『個々人の凹凸をマネジメントレイヤーが把握できること』こそ、めっちゃ手間はかかるものの、本来進むべきルートなのかもしれないですね。少なくともエージェントに『超人ください』て駄々ぶつけるよりは建設的でしょうし。

『ディレクション検定』はディレクターから嫌われるくらいでいい。田口真行の覚悟と意地

と、ここまでのお話で『ディレクション検定』のサービスおよび観点としての必要性については理解できましたが、しかし一つ気になる点があります。

これ、ディレクター本人が嫌がらないか?

です。いや、項目自体がいわゆる広義でのコミュニケーションスキルにあたるものですし、可視化されることに対する忌避感もそこそこ出そう。何より出た結果に対して『いや納得できないんですけど』て内心なりそうだなと思うんですが?

――田口

ええ。そうなるだろうと思います。なので、実際に受けてもらうシーンでは「ディレクター自らが率先して」というより、所属するコミュニティ(企業なり団体なりの評価する側)からのある程度の強制力は必要になるでしょうね。

ただ、それこそ今までは『評価に納得できない!』と不満を伝える矛先が、マネジメントする人の脳内基準しかなかったんです。

具体的に可視化して比較可能な状態となったものに対して不満をぶつけられるなら今よりずっといいと思っていますよ。

うーむ。確かにそれはそう...なんですが。

でもその考え方だと利用者(≒ ディレクター)にとっては少々嫌なサービスというか、なんだか嫌われてしまいそうですよね。サービス自体が。

――田口

かもしれません(苦笑)。僕が2006年にデスクトップワークスを立ち上げたときには既に似たようなことを考えてたんですが、当時やっぱり同じような『やらない理由』をいくつも考えて事業化を断念したんです。

ニーズが薄い。技術的にも難しい。作ったところで受検する側のディレクターに嫌われて終わる...とか、そんな感じで。

しかし、田口さんはそれでも。それを分かった上でも今回『ディレクション検定』という事業をやると決められたんですね。

――田口

ええ。そもそものキッカケは「このままでいいのか?」という想いが発端になっていて『ディレクションというスキルを適当で曖昧でいいかげんな解釈のままにしたくない』という気持ちが強いです。

誰かがやらなきゃ変わらないと思いますし、たとえ難しい挑戦であっても、それが現場で働くディレクターとディレクターを雇用する企業をよりよい関係に導くものであるならなおさら全力でチャレンジしてみたい。

僕にとってディレクションという仕事は誇りであり、アイデンティティですから。

インタビューあとがきとディレクション検定の今後について

と、いうわけでサービスの骨子や概要はそこそこに、どちらかといえば熱意や覚悟について田口さんに語ってもらったわけですが、いい加減サービスそのものについても触れておかないと。と思いますので、以下ざっくり紹介。

ディレクション検定 サービスの現状について

  • 既に公式サイトと発表会見時の動画ダイジェスト、実際の検定課題例などが公開済み
  • 現在は50社限定のβテストパートナーを募集中(2019年10月8日時点で、かなりの大手を含む41社からのエントリーがあるそう)
  • 応募には専用エントリーフォームからの申込みが必要

実際にその熱意に触れ、βテストに寄せられる企業側からの期待などについても知った今、ナカムラ個人としてもかなりディレクション検定への期待値を高められてしまったインタビューとなりました。

  • 評価する側は適正な基準をもたなければいけない
  • そうでないと権限が渡せない
  • 権限のないまま期待だけ投げつけても人材がもたないし
  • 権限を渡した先に適正がないと悲劇が起こる

もちろん分かっちゃいるんですが、どこかで『それってでもしょうがなくない?』と諦めてしまっていた領域に真正面から取り組むと決めた姿は、やっぱりちょっと格好よかったですね。

今後は検定結果からの評価採点ロジックに機械学習を用いたモデル構築なども検討している。ということでしたし、またそっち方面でも絡めたらぜひ!ということで。

色々楽しみにしてます!